研究概要
NICTでは、電波の環境問題の一つとして、人体が電波に曝されたときの安全性について研究を進めています。
電波の安全性を考えるとき、電波に曝された人体のどこにどれだけの電波エネルギーが吸収されたかを正確に調べる必要があります。特に、人体の各組織に吸収された単位重量あたりの吸収電力である比吸収率またはSAR(Specific Absorption Rate)は電波に曝された人体に生じる熱的な影響を測る指標として用いられています。電波に曝された人体におけるSARを実験やコンピュータシミュレーションで明らかにすることを曝露評価またはドシメトリ(Dosimetry)とよびます。NICTでは、「高精度な曝露評価技術に関する研究」を進めています。
一方、わが国を含めた各国では、電波を安全に使うために電波防護指針を定めています。この指針は人体の健康に好ましくない影響を与えることがない電波のレベルを定めたものであり、わが国で使用されている携帯電話端末からの電波や放送局や携帯電話基地局からの電波はこの電波防護指針値以下であることが求められています。NICTでは、「電波防護指針値の適合性評価技術に関する研究」を進めています。
他方、携帯電話や無線LANやRF-IDなど、私達の身の回りには様々な電波が使われるようになりました。このような状況に対し、世界保健機関(WHO)は電波防護指針を満足している限り、人体健康に悪影響を及ぼす確固たる証拠はない、としていますが、まだ知られていない未知の影響についての可能性を調べるために、世界各国で協力して研究を進めることを勧告しています。わが国では総務省生体電磁環境に関する検討会のもとで、電波の健康影響を調べるための医学・生物学的研究を進めています。NICTでは、「医学・生物実験のための曝露装置の開発および曝露評価に関する研究」を進めています。