生体EMCを理解するキーワード
- FDTD法(時間領域差分法)
- 電磁波の伝播を記述するマクスウェルの微分方程式を差分(Finite Difference)化し、時間領域(Time Domain)で解く方法。メッシュ分割できる解析対象であれば基本的にどんなものでも解析できます。
- ICNIRP
- 国際非電離放射線防護委員会のことです。WHOが公式に認める電磁界への曝露に対する国際ガイドラインを作成・改正を行なっています。正式名称は International Commission on Non-Ionizing Radiation Protection です。
- MRI
- 強い磁界にさらされた原子核が特定の周波数の電波に共鳴して、自ら電波を発生するという核磁気共鳴と現象を利用して、生体内部の形態情報を画像化する方法です。X線CTのように放射線を使用しないため、被爆がなく、人体に対して非侵襲であるという特徴を持っています。
- NICT
- 国立研究開発法人情報通信研究機構の英語名(National Institute of Information and Communications Technology)の略称。電波の安全性に関する研究を実施しています。
- RF-ID
- 微小な無線チップにより人やモノを識別・管理する仕組みです。耐環境性に優れた数cm程度の大きさのタグにデータを記憶し、電波や電磁波で読み取り器と交信します。
- SAR(Specific Absorption Rate)
- 比吸収率のことで、生体が電磁界にさらされることにより単位質量あたりに吸収される電力を意味します。
- SARプローブ(測定プローブ)
- ある量(ここではSAR)を測定するために、測定したい場所に接触させるセンサー、つまり、探針のことです。
- UHF帯
- UHF(Ultra High Frequency)帯は300MHzから3GHzの周波数の電波です。携帯電話、PHS、無線LAN(2.4GHz帯)、地上アナログおよびデジタルTV放送でUHF帯の電波を利用しています。
- VHF帯
- VHF(Very High Frequency)帯は30MHzから300MHzの周波数の電波です。FM放送、アナログTV放送、アマチュア無線(50MHz,144MHz)などでVHF帯の電波を利用しています。
- W-CDMA
- Wideband Code Division Multiple Accessの略称。国際電気通信連合で定められたIMT-2000規格(第3世代携帯電話方式)に準拠した通信方式の一つです。高速移動時144kbps、歩行時384kbps、静止時2Mbpsのデータ伝送能力が規定されており、世界統一の規格です。
- 足首誘導電流(Induced ankle current)
- 人体が電磁場に曝されたとき、足首から地面に流れる誘導電流のことです。
- 医学監修
- 人体のMRIデータに基づいて同定した人体組織・臓器の位置や、組織分類の誤り等を専門医に確認してもらう作業です。
- 疫学研究
- 地域や集団内で収集した症例のデータを整理・分析し、これらを解析することにより、疾患や健康に関する事象の発生の原因等の関連性を明らかにするための研究です。
- 円偏波
- 電波の進行方向に垂直な面内で、電界の向きが円を描くような電波のことです。
- 基地局
- 携帯電話と直接交信する、携帯電話網の末端にあたる装置です。
一般には、携帯電話やPHSなどの無線通信端末と直接交信を行うためのアンテナや装置などを含めた建造物のことを指します。
- 基地局シミュレータ
- 携帯電話などの試験用に、基地局の代わりに基地局と同じ信号を発生させる装置です。
- 基本制限
- 確立された健康影響を直接的な根拠として定めた、電界、磁界および電磁界の曝露に関する制限のことです。これらの制限に用いられる物理量は、電流密度、SAR(比吸収率)および電力密度であり、周波数によって異なります。
- 較正
- 測定器の指示値を、測定標準(基準となる量)に合うように調整することです。「校正」とも書き表します。
- 国際がん研究機関(IARC)
- 発がんのメカニズム、疫学、予防等の研究をする組織として設立が決められた世界保健機関(WHO)の外部組織です。種々の化学物質、放射線やウイルスなどの発がんリスクを評価して、モノグラフとして公表しています。フランスのリヨンに本部があります。WHO国際電磁界プロジェクトの一環として、携帯電話使用と頭部・頚部腫瘍との関連を追究するインターフォン研究を実施し、現在その結果を分析中です。正式名称は International Agency for Research on Cancer です。
- 参考レベル
- 基本制限を越えるかどうかを決定する目的で、実際的な曝露評価を行うために設けられたものです。参考レベルが満たされれば、関連する基本制限が満たされることは保証されると考えられます。参考レベルを超えた場合は、必ずしも基本制限を超えていることにはならず、基本制限を満たしているかどうかを評価するために、より詳細な分析が必要と判断されます。
- 垂直偏波
- 地面に対して垂直な電界をもつ電波を垂直偏波といいます。
- スーパーコンピュータ
- 大規模な科学技術計算に用いられる超高性能コンピュータをスーパーコンピュータと呼びます。
- 世界保健機関(WHO: World Health Organization)
- 健康を基本的人権のひとつととらえ、その達成を目的として設立された国連の専門機関です。スイスのジュネーブに本部があります。正式名称はWorld Health Organizationです。WHO国際電磁界プロジェクトのサイトはこちらです。
- 全身共振現象(Whole-body resonance)
- 人体身長が電波の波長と同程度になるときに、人体があたかもアンテナのように振舞い、電波の吸収が大きくなる現象です。身長や周囲の条件により、30MHzから300MHzの周波数範囲で全身共振現象が生じることが知られています。
- 総務省生体電磁環境研究推進委員会
- 電波の安全性に関する研究課題や電波防護指針の見直しについて提言を行なってきた委員会。医学・生物学の専門家と工学の専門家により構成され、平成19年に10年間の調査検討や諸外国の検討をふまえた電波の安全性に関する報告書をとりまとめ、活動を終了しました。
- 対照群
- 疫学研究やボランティア実験において、ある注目している疾患等にかかっていない群、コントロールグループとも言われます。また、動物実験や細胞実験で注目している因子(ここでは電波)に曝露しない群を意味する場合もあります。
- 適合性評価
- ある基準を満たしているかを評価することです。ここでは主に法律などで定められた基準を満たしているかを検査することをさします。
- 電波暗室
- 中で発生した電波が壁で反射しないように作られた実験室。壁に電波を吸収し、反射を抑える、電波吸収体を設置することで実現されます。
- 電波防護指針
- 総務省が平成2年6月に策定した、人体の健康に好ましくない影響を及ぼさない電波の強さの指針のことです。(平成9年4月に局所吸収指針が追加されました。)
- 導波管
- 電磁波伝送用の金属でできた管で、管の断面の寸法で伝わる波長が決まります。
- 曝露装置
- 電波の生体安全性を評価するための医学・生物実験において、実際に生体に電波を曝露するためのアンテナ等を含む装置です。
- 曝露評価(ドシメトリ;Dosimetry)
- 人体が電波に曝された場合に、電波が人体の「どこに」、「どれだけ」、吸収されたかを測定や計算により求めることです。英語では曝露量の意味のDoseを定量するという意味でDosimetry(ドシメトリ)と表現します。
- 波長
- 周期的な波において、伝搬方向で連続する同じ位相の2点の距離のことであり、波が1回振動したときの距離です。
- 発症リスク
- ある疾患などになる危険度を指します。
- 比吸収率
- SARのことで、生体が電磁界にさらされることにより単位質量あたりに吸収される電力を意味します。
- 標準化
- 標準を決めて製品などの規格や種類を統一することです。
- ファントム
- 生体と同様の電気的特性を有する材料で構成された代替モデルのことです。
- 不確かさ
- 測定の結果に附随した、合理的に測定量に結び付けられ得る値のばらつきを特徴づけるパラメータで、統計量の組み合わせとして用います。
- 平面波
- 電磁波の発生源から無限に遠いとき電磁波の電界と磁界と進行方向はお互いに直交します。このような電磁波を平面波といいます。
- ボクセル(voxel)
- 2次元デジタル画像を構成する単位のピクセルに対して、厚み情報を加えた3次元デジタル画像を構成する単位のことをボクセルと呼びます。ボクセルは厚みを持った粒子として表現されることから、3次元画像の断面図を表現でき、医療画像データはボクセルで表現されています。
- モーメント法
- マクスウェルの方程式から目的とする構造に対する積分方程式を導出し、重み関数(モーメント)をかけることで、数値的に解く方法です。FDTD法が任意形状で良いのと比べると対象物の構造に制約があります。プログラムはFDTD法より複雑になりますが、限定形状の場合には高精度な解析が可能であり、アンテナの計算によく使用されます。