電波は光と同じ電磁波で直進する性質があり、また金属にぶつかると反射したり、物体に対して回り込む(回折)性質を持っていて、放送、通信をはじめ様々な形で利用されています。波には周期があり、一秒間に何回波の振動が繰り返したかという数を周波数と言い、単位はヘルツ(Hz)です。高い周波数の波、つまり短い周期で振動する波ほど直進性が強くなるなど、電波の性質は周波数によって異なります。
電線で電気エネルギ-が伝送されるように、電波もまたエネルギーを伝送することができます。電波は空間を伝わってあらゆる方向に伝搬していきます。そのエネルギーを用いて様々な分野に利用されています。電波の利用の代表格は、テレビ、ラジオ放送、携帯電話など通信・放送の分野です。その他にもレーダーや加熱装置(工業用・家庭用)のエネルギー源として利用されていて、情報通信研究機構でも数多くのテーマが研究されています。電波は様々なかたちで利用されているので、お互いに悪い影響を及ぼしあわないよう「電磁環境」を考慮して調和のとれた使い方をする必要があります。
テレビやラジオなどの放送
電子レンジ:
マイクロ波で水の分子を振動させて暖める。
携帯電話
ケーブルのいらないネットワーク無線LAN
ICカードを用いた非接触システム
ハイパーサーミア:
電波の温熱効果を医療に応用。
電波によってひらかれた空間をエネルギーが伝わるので、勝手に電波を使うとお互いに干渉することがあります。そこで電波を利用しようとして出している通信、放送など同士の関係は「電波法」という法律等で、お互いに使ってよい周波数(単位時間あたりの波の数)や大きさが決められています。当グループでは実際に私たちの周囲に存在する電波の観測も行っています。
しかし、電波を利用しようとしていないものでも電気を使っているもののほとんどは電波を出してしまい、その中には通信、放送を妨害したり、電子機器の誤動作を招く可能性があるものもあります。電波は水や空気と同じように地球上に常に存在しているもので、それらがお互いに悪い影響を及ぼしあわないように…ということについて考えるのが「電磁環境」という分野です。
雑音=ノイズには空中を伝わる放射ノイズと、電線など導体を伝わる伝導ノイズがあります。これらによる通信品質の劣化を防ぐために、電波を利用する場合にはその出力レベルは電波法で定められています。
また、電波を利用しない電子機器等からのノイズの許容値も製造会社の自主規制によって定められています。しかし、1 GHz以上についての測定、評価方法はまだ国際機関で審議中です。
電磁波の影響については30年以上も研究が行われており、非常に強い電磁波は様々な影響を人体に与えることが知られています(下の図を参照)。これらの影響をひきおこす電磁波の条件(強さや周波数)はこれまでによく調べられており、それらを基に電磁波に対する防護指針が定められています。最近では、携帯電話など人体のごく近くで使われる電磁波源に対して新たな安全指針が追加されました。現在も、電磁波の安全性評価をより確かなものにするために多くの研究者により活発に研究が進められています。
アナログ機器たとえば100 Vの電球は、電圧が100 + 1 Vになっても燃えません。でもデジタル機器の場合、もしそれが「1 Vを1、それ以下を0」と判断する機器だったら…。それが医療機器をオフする信号線に入ってしまったら大変な問題です。もちろんそのようなノイズを出さなくすることに加えて、機器の側がノイズに対してどの程度強いかを知り、耐ノイズ性を高める対策をとることが必要です。
しかし、やっかいなことに電子機器はノイズの発生源であり、ノイズにより影響される側でもあるのです。
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