線局から発射される電波の強さの測定や、コンピュータ等の電気・電子機器から放射される不要な電波(通信の邪魔をするという意味で、「妨害波」とも呼ばれます)を測定するためには、電波を受信するためのアンテナが必要になります。
アンテナは、周波数帯によって様々な形状、特性を持ったアンテナが使用されており、その特性は、アンテナ係数や利得と呼ばれる値によって定めることができます。電磁環境研究室では、アンテナ係数や利得を正しく求める方法(較正方法)について研究を行っています。
また、アンテナの較正を正しく行うには、較正を行う場所(サイト)の特性が問題になります。アンテナ較正に用いる測定場として必要な条件を明らかにし、正確な較正が行えるようにするための研究も行っています。
これらの成果は、「計測サービス」に反映され、社会に役立っています。
屋外測定場とは、オープンサイト(OATS:Open-area test site)と呼ばれる地面に金属板が平坦に敷かれた測定場で、金属板の大きさは40 m × 25 mです。
写真は、30 MHz~300 MHzの測定に使用するバイコニカルアンテナを較正している様子です。
バイコニカルアンテナは、広帯域アンテナの1つで、30 MHz~300 MHzの測定を一度に行うことができるアンテナです。妨害波測定で広く用いられています。
300 MHz~1,000 MHzの測定には、広帯域アンテナの1つである対数周期ダイポールアレイアンテナ(ログペリオディックアンテナ、LPDA等と呼ばれる)が使われます。
電波暗室とは壁・天井・床を金属で囲まれた部屋(長さ28.5 m × 幅17.5 m × 高さ11.7 m)で、内側には、電波吸収体が張り巡らされている部屋です。
金属で覆われているため、外からの電波は遮断し、中からの電波を外に出さないという特長があります。また、壁・天井・床に張り巡らされた電波吸収体が電波を吸収するため、理想的な空間(自由空間)を模擬した測定が可能になります。
写真は、標準ゲインホーンを較正している様子です。標準ゲインホーンは、使用可能な周波数範囲が決まっており、8種類のホーンを使って1 GHz~18 GHzの測定を可能にします。
アンテナの較正に適したサイトであるか否かを評価する方法について検討をおこなっています。
左のグラフは、国際規格(CISPR16-1-5)で定められたアンテナ較正サイト評価法(CALTS)により、大型電波暗室の評価を行った結果です。
半波長共振ダイポールアンテナを使って、30 MHz~1,000 MHzの24周波数で測定を行っています。
測定値と理論値との差が、±0.6 dB未満で一致しており、アンテナ較正に適した環境が得られていることが分かります。
この他、30 MHz以下で用いるループアンテナの較正、ミリ波帯用の標準ゲインホーンの較正、マイクロ波帯で用いるパラボラアンテナの較正に関する研究開発を行っています。